
こんにちは。堀之内です。
日々、私たちは進化しています。継続して受講なさる方々の様子、そして新しく学ばれ始めた方々の様子を拝見していて、やはりトレーニングへのニーズというのは「ご本人の成長」や「世の中の変化」で移り変わるものですから、一定の期間が経つと私も自分のトレーニングが古くなってきているなーという感じになってきまして、リニューアルしようという気が湧いてきます。
なので、私の提供するトレーニングも、大枠というか主たる筋には変わりないのですが、組織の幹部、管理職の方々に向けのプログラムを見直し、「0.5歩サーバントメンター講座」を開講することにしました。
先日、その第1期を開催しました。
さて、一番の変更点は、どういう点だったと思われますか?
それは、私が多くの質問をするということです。質問といっても、知識を問うものではありません。その質問によって、受講者が”懸命に考える”という状態が作られるような、そういう質問です。参加者に「気づき」を促し、「思考する力」を鍛錬します。
こういったトレーニングは初めての試みでしたが、非常に大きな手応えを感じました。
一言でいうと、今回のトレーニングで学んで頂いたのは、クリエイティブな発想の開発です。それから、これを達成するために、どういうことをすればすでにご自身が持っているスキルを磨けるか、体験的に気づきを得て頂いたということです。
そのような気づきのために、私のこれまでのトレーニングと変わらず、少人数グループでのロールプレイとその録画のふりかえりという核となる手法は継続しています。
ただ、「どういうことをすればいいのか?」を徹底して考えるという要素を強調していくことで、新しいスタイルの鍛錬となるわけです。
「考えてごらん」
そうすると、受講者が考えだしたものが私の発想と違うという事態が起きるのは当たり前。だとしても、それが大切にされ、トレーニングが展開されていくという感じが受講者にはおありだったのではないでしょうか。
発想を制限しないで考えさせていくと、初めはおっかなびっくりでも、次第にグループごとに独自の発想が豊かに噴出し始めます。
「自分はこう思う」という表現できるようになり、また他のメンバーの意見を聞いたり、ロールプレイを観察することで新しい考えを持ち、次の「自分は今はこう思う」を創り出す。それを繰り返していくと、受講者がご自分でご自分に一番ピッタリくる発想と表現を確立していかれるわけですが、こうなってくると一種の「アーティスト集団」と言えるでしょう。
部下集団というのも、このトレーニングのグループの根本的には同じです。メンバーの性格も能力もバラバラで、それぞれの特長を有しています。彼らが発信、アウトプットするものというのは即興的な面が大きいのです。ですから、部下を指導するときに必要なのは、このようなアーティスト集団を活性化する力なので、上司側の即興性というのがとても大事になってきます。
とすると、即興的な能力を上司が身につけるためには、どうしたらよいか?
真っ先に言えるのは、講師が一方的に話すというセミナー形式のトレーニングでは無理なのです。従来の幹部社員の教育というのは”ある考え方を覚えさせる”というスタイルですが、これはせっかく多くの経験を積み、サバイバルに成功してきた幹部社員たちの”経験値”がまったく活かされない。もったいない。
その”経験値”を自分でどう使っていくかというスキルを磨く練習が0.5歩サーバントメンター講座の肝です。
すでに得た知識、経験値をフル動員するような状況を与えるというのは、実務ではリスクが大きく、恐れがあるかもしれません。だからこそ研修という安全な場で、失敗ややり直し、試行錯誤が自由にできる機会が必要なのです。そして、安全な環境でいろんなお試しをすることが、ご自身の知識・経験値のブラッシュアップになっていく。そういう勉強をして頂いたというわけです。
こういう形でブラッシュアップされてくると、各メンバーの気づきの力が強まっていくので問題に対して敏感になっていきます。そして、その問題を避けないでしっかりと向き合うことが始まります。
受講して自分の問題の一番大きな部分としては、「自分の力量」についての気づきということになるかもしれません。
「ああ、自分には能力がないなあ」
「これまでずーっと誤魔化しながらやってきたなあ」
「こんなに自信がなかったんだなあ」
こんなふうに心の中の未処理の問題に気づき、向き合うようにトレーナー(メンター)が導きます。
従来の講師が一方的に伝える知識伝達型・思考の枠組み強要型の研修ではトレーナーのフィードバックは「正しいor誤り」しかない。
私の言うサーバントメンター型のトレーナーは、メンバーが手探りで”鉱脈”を自分で考えながら捜し当てるプロセスを尊重します。
なぜこんなことをするのでしょうか?
トレーニングで一番頑張るべきは誰でしょう?
それは受講者です。トレーナーは受講者が目標を達成できるように支え導くサーバントとなります。
その構造は職場と同じです。つまり、会社という組織は社員を支え導くサーバントとなり、社員が思考・学習する集団となるように成長させていく機能が必要です。
受講者にお題を与え、とことん考えてもらっている間、トレーナーである私が寝てしまっていてもよいほど、受講者は集中していました。受講者の皆さんは2日間のトレーニングだったけれども、半日くらいにしか感じられなかったのではないでしょうか。それくらい、自分で考えて前進するというのはクリエイティブな時間です。
日本の家庭・学校では知識伝達型・思考の枠組み強要型の育て方が主流ですから、子どものころからそういったクリエイティブに思考する体験が少ない。そのまま社会に出て、組織の一員になって、いつまでも教わったことをやるだけで、自分で考えて行動しようとしないということになっています。そして自分で考えると叱られたりもしますから、考えるというクリエイティブな作業に対してネガティブなイメージがこびりついいる方が多いのですが、十分に成熟した大人、特に組織で幹部職員・管理職をなさっているような方であれば、考えるという取り組みの面白さを体験しさえすれば、あとは自発的に再現できるようになるのです。
もちろんトレーナーである私がしっかり導く役割を果たしてはいるのですが、考えて動き出す役割である受講者がそれに取り組んでいる間は、私はそれを妨げないでいるだけでよい。だからトレーナーは例え寝てしまっても問題ないのです。
実際に私がお手伝いしているある企業では、組織を学習する集団に成長させることに大成功されています。
社員一人ひとりの経験値を活かす会社は伸びます。私がトレーナーとしてやっているように会社が社員が”考える”ことを妨げず、むしろ推奨し、鍛錬の機会を提供していくと、私のトレーニングで受講者が変化・成長するように、会社が社員を変化・成長させるのです。
なので、トレーニングにお出で頂いて、私がやっていることをモデルにしているだけで、知らず知らずのうちに、あるいは意識的に、組織を学習する集団に変えていく力のあるメンターが育っていくでしょう。
実際の事例については、またの機会に詳しくお伝えできればと思います。
さて、一番まずい管理職の育成方法は何だと思いますか?
それは答えを教えること。答えを教えること(指示すること)がリーダーの役割とする古典的スタイルがまだあります。
答えではなく、その解き方を編み出すという経験を教えることこそ、学習する組織作りのコアです。
ただ、考えるという作業を限られた引き出しだけを使っていては、豊かな発想はもたらされない。なので、すでに編み出されているコミュニケーションのスキルを正しく学び、受講者がご自身のスキルや理解を修正するために必要なフィードバックも必要です。
私の行ってきた旧プログラムと同様に、スキルの講義と、もっと観察すべきポイントや言葉かけのバリエーションをロールプレイ中または後にフィードバックするというステップもありますので、ご安心ください。
サーバントリーダーについての著書はまあまあ出ていて、そこで説明されている概念はよくわかる。でも、具体的にどのように組織や管理職がサーバント的であればよいのかは、具体的な育成プログラムやスキルは示されていません。
私はサーバントリーダー論の具体的手法として、今回の新プログラムがそれに答えを出していると感じています。
第1期0.5歩サーバントメンター講座は、2・3・4月(それぞれ連続2日間、合計6日間)を1クールとしています。受講者の皆さんにはご自身でトレーニングカルテも作成して頂いて、宿題もご自身で考えて頂きました。さて、どんな変化があるでしょうか。
受講者の皆さんとは来月またお会いできることを楽しみにしております。
堀之内高久