「福祉・介護専門職プロ講座」~『福祉面接症候群』克服のために~

06.04

こんにちは、堀之内です。

 少し前になりますが、「福祉・介護専門職プロ講座」(全4回)第3回がありました。4回シリーズで、月1回ペースで開催していますが、各回ごとにもご参加いただいています。とはいえ、ほとんどの方が3回以上の受講なので、1か月ぶりや2か月ぶりということになります。

「面接の際の大切な質問」

人の変化や成長をお手伝いしていて、このように再びお会いしたときに、まず初めに必ずする質問があります。

<前回お会いしてから、どのような変化がありましたか?>

 これはとても大事な質問です。出会った時の最初の質問に、メンター(面接者)側の基本姿勢、理論的な立場といったものが示されます。

 人は何のために相談、面接するのでしょう?
それは、 自分が変化するためです。

 ですから、「変化」について聞くのです。

 よくある返事。「特に変化はありません」

 そのような時、どうすればいいのでしょうか?
「悪くなっていないということですね」と楔(くさび)を打つようにします。
ただ、この時、大事なコツがあるのですが・・・それは私のトレーニングに参加して学んでください。身につきません。

 大事なポイントは・・・
 自分が今、目の前の人とお会いしていることの目的を明確に認識することーそれは
 「すべてのスキルは、相手の変化・成長を阻む問題を解決するために使う。そのために今ここにメンターとして自分がいるんだという自覚を必要とします」

 私のトレーニングに興味をお持ちになったり、長年継続されている方は非常にこういった意識が高くていらっしゃる。大変結構なことです。

 さて、以前のブログでもお示ししましたが(こちら)、福祉や介護の分野では『福祉面接症候群』がはびこっています。

 具体的には、こんな具合です。

  • 相手の愚痴を聞いてあげることが相談だと思っている(愚痴聞き症候群)
  • 相手からの質問に必ず答えを与えなくてはいけないと思っている(専門家だから症候群)

どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?
 ➀まず、人のお役に立ちたいという「自分満足」の欲求からくるものがあります。
 その人たちは、「聞いてあげる」という言葉を使います。
 聞いてあげるということはどういうことでしょうか?
 前提は、善意の高位置者と思い込んでいるだけなのですが)であり、「あなた困った人、私、解決する人」という立ち位置にいます。ただ、地域によって、言葉の使い方にそのようなものは意図されていないかもしれませんが、私の理解は、前述したとおりです。 

ーならば、どうすればいいのか?
 ガイドとして、当事者の0.5歩前後に立ち、主人公である当事者の黒子として取り組むこと。そういうときに、・・・・してあげるということは生じません。
 危険な場合は、直面化(叱りつけることもあります、あなたほどの方が!!!と)し安全となれば、愚痴話もかまわないということもあります。 

職業の性格からくるもの
 ・話を聴いて、情報提供し、解決アドバイザーとなるということ、すると、応じた知識を持っていなければなりません。役割は「アドバイス」が中心となります。必然的に情報を与えることになります。与えなければならない、となっていきます。
ーところが、情報を与えても変わらない利用者に出会っています。増えているはずです。うまくいかないとさらに情報を与えますが、うまくいきません。自分の仕事の役割を果たせず、落ち込むことになります。 

 それはあなたが問題なのでしょうか?
 そうではなく、仕事の情報提供者という役割は古典的な役割となっていることに気づかないでいることに問題があるのです。つまり、現在は、与えるのではなく、気づかせるということが仕事の中心となっている、役割の変化があるということなのです。
 福祉領域の対象者は、現状維持モデルや保護モデルに該当します。今困っていることを明確にし、明確にするだけで、道が開けます。その時、適切にねぎらい、自分のパワーを体感し、今日の一歩の希望を得る、という取り組みです。
 ですから、答えを与えるということではなく、答えを自らが導き出す、その力があり、一歩の希望を自らが作り出すという取り組みなのです。この理解がない場合、福祉面接症候群に陥っています。

[福祉面接症候群の背景]
 それは一つには感情労働ゆえの問題。相手に接しているとき、いくらプロとは言え生身の人間として湧いてくる感情が必ずあります。それを適切にコントロールする術を身に付けていないため、押さえつけて日々をやり過ごすものの、堪忍袋にも容量があります。一番怖いのは自分でも気づかぬうちに、特に怒りの感情を向けてしまうことです。極端なケースですと、福祉施設などでは利用者を虐待…という形で現れます。

「うちの施設はそこまでは…」と安心したい職員も多くいらっしゃると思いますが、ちょっと思い返してみてください。決定的な虐待とは言わないものの、どこかこうチクチクと意地悪な一言をつい混ぜてしまうという光景は割りと日常的に潜んでいるのではありませんか?

こういうふうに、怒りに無自覚でいるといつまでも解消せずに残りますから、その残ったものを”ちょっとした意地悪”とか”職務放棄”みたいな形で発散してしまうのです。

それは対人援助職、とくに福祉・介護分野をキャリアとして選択されている方の元々の特性によるものの影響が大きいのです。
 相手に尽くしたいという動機(相手に喜んでいただくことで自分の価値が高まり、生まれてきた意味が得られる、存在が感じられることを目指して)が高いので、援助職であるご自分が「十分に相手に尽くせた」という実感を得ることを目的とした面接になる危険性があります。

 そして、相手に尽くしたいという気持ちが大きければ大きいほど、拒まれたり、援助職側にとって理想でない形のサービスで終わってしまった場合に、不全感が強く残ります。その苛立ちに自覚がないと、知らず知らずのうちに誰かにその感情を向けて、無自覚な解消をしてしまうのです。

 その結果、私の経験から見て、福祉従事者の夫婦関係破綻、思春期の子どもの悩み・・・職場内恋愛問題となり、それがなんと多いことでしょうか? あなたご自身だけでなく、周囲にも多くいると思います。

 さらに利用者に暴力が向けられます(動画配信サイトもご覧ください>相模原殺傷事件を例にとって解説しています)。

ー福祉面接症候群からの脱却は、ご自身の未解決な感情に気づき、自覚的に解消する取り組みであり、スキルの鍛練と共に、そういった取り組みをご自分に課すことによって簡単にできることです。

 もうこういう面接はしたくないのに…というお気持ちで仕事に向かわれている介護・福祉職のみなさんが変化するためのお手伝いを私は今後も続けてますが、この手法を周囲や部下に教えていく次代の0.5歩サーバントメンター(管理職)の参加を願っています。

 この講座は今年度は残すところあと1回となりましたが、ふるってご参加ください。お会いできる日を楽しみにしております。

 堀之内高久

◆事務局よりお知らせ①◆

福祉・介護専門職プロ講座」は全4回のシリーズですが、各回ごとのご参加が可能です。

 お申込みは こちら からお願いします。

■対象となる方

 福祉・介護領域の対人援助職で、特に日常業務で人材育成に携わっている方にお勧めです。

■日程(時間はすべて10時開始~16時終了)

 第1回 3月16日(土)※終了しました
 第2回 4月13日(土)※終了しました
 第3回 5月11日(土)※終了しました
 第4回 6月15日(土)

■会場

 品川区立総合区民会館きゅりあん
   JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線 大井町駅下車。徒歩1分

■受講費

 全4回 105,300円(税込)
  1回   31,320円(税込)

◆事務局よりお知らせ②◆

今年もBeingワークショップを7~8月にかけて

   全国5ヶ所(雫石、箱根、宮崎、  淡路、広島)で開催いたします。

すでにお申し込み受付を開始しております。

詳しくは こちら をご覧ください。

※お陰さまで宮崎会場はすでにお申し込みが定員に達しました。キャンセル待ちとなっておりますので、ご了承くださいませ。

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